専攻課程への導入の授業で学生と対話するなかで、関連分野についての新書の抑え方をある程度共有できた方がよいと考えたので、授業資料に大幅に加筆する形で公開してみます。

中公新書『帝国図書館』
1.新書とは?
- B6判よりやや小型で,約182×103mmの判型の本。「新しい本」という意味ではない。
- 1938年に岩波書店が創刊した岩波新書に由来する。長年発行を続けている主要なレーベルとしては岩波新書、講談社現代新書、中公新書が俗に「新書御三家」と言われ、そのほかにも2000年代の新書ブームを経て多くの出版社が毎月新書を発行している。
- 内容はレーベルによっても教養系から実用系までだいぶ幅があるが、現代の一般読者向けに書かれている点では専門書ではなく、学術的な硬めの内容でも専門への入り口を示すもの、入門書的な本と位置づけられる(実際、タイトルに「〇〇学入門」のような新書は多い)。
したがって、各人が関心を持つ分野でどういう議論がなされているのかを知る上で有益なだけでなく、専攻課程に進む前に身に着けておくべき基本的な知識も、新書を複数読むことによって獲得することができる。
2.新書を探す
図書館や書店の新書コーナーで背表紙を漠然と眺める(ブラウジングする)だけでも、「こういう著者がこういう本を書いているのか」が頭に入ってくるので非常に有益だが、それ以外に以下のサイトを推奨する。
新書マップ 4D
連想検索機能によって関連したテーマを探すのに適している。
4D版の開発経緯等についてはカレント・アウェアネス「E2772 – 読書案内「新書マップ4D」の開発経緯とサービス概要」(2025年2月)に詳しい。
新書大賞
中央公論新社が主催する新書にまつわる賞。
書店員や書評家、編集者、研究者らの投票によって決定されるので、単純な売れ行きだけでない基準から選ばれた本を知ることができる。
年1回、『中央公論』3月号で発表される。
https://chuokoron.jp/shinsho_award/
その他
新書に絞った大学生向けのおススメ本の紹介サイトや動画も探せばきりがない(Amazonには新書売上ランキングがあり、ブクログなどの読書サービスでも新書ランキングを載せている)。最近では、講談社現代新書などAudibleなど朗読サービスに力を入れているレーベルもある。
3.何をどう読むか
以下については、日本近代史の基礎教養を身に着けるという前提で述べる。新書で読める通史シリーズとしては、現在入手可能なものとして
岩波新書のシリーズ日本近現代史全10巻
https://www.iwanami.co.jp/book/b267029.html
また、筑摩書房から出ている歴史講義シリーズの各巻
https://www.chikumashobo.co.jp/special/history_lecture/
などがある。
中央公論新社は複数巻で通史になるような新書は出していないが、テーマ別、時代別で、歴史用語の一項目分になるようなタイトルは充実している。
また、Web中公新書のように著者インタビューを載せているものもある。
https://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/
なお、新書ではないが、1990年代後半から2000年代にかけて単行本で発行していたシリーズの文庫化も進んでおり、中公文庫から<日本の近代>全16巻、講談社学術文庫から<日本の歴史>全26巻が刊行されている。
※同じころ発行されていた小学館の「全集日本の歴史」や吉川弘文館の「日本近代の歴史」も充実しているが、こちらは単行本のみ。
※新書に限定せず、通史など基本的な文献を知りたい場合はお茶の水女子大学の「近現代史入門 文献案内」がお勧め。
読み方
読み方としては、いろいろなやり方があってよいと思うが、筆者は大学1~2年生の頃に次のような方法を取っていた。
- 通史シリーズのある巻を1冊購入する。
- 最初から読みながら知らない人名と単語の横にひたすら傍線を引いて、自分の知識を確認する。
- 図書館等で知らなかった語句を専門辞典(『国史大辞典』など)で片端から調べコピーを取る。
- 集めたものをB6の情報カードに切り張りして、ちょうど受験英語の単語帳のように自分専用の用語集を作る。
これは授業に出て自分の知識のなさに焦って試したものだが、思った以上に後々役に立ったので、一つの例として紹介しておきたい。
今はジャパンナレッジなどの辞書もあり、各段に本文の用語を調べる手間は減っていると思われる。
どのくらい読むのか
斎藤孝『読書力』(岩波新書)は、読書力の基準として、「文庫100冊、新書50冊」というのを提案しており、新書については次のように述べている。
学問をコンパクトにまとめたものは、学問の入門書として最適だ。学問をし始めるはずの大学生がそれを読むことは自然であるのに、新書を読む読書習慣が大学生にないとすれば、それはむしろ不自然なことだ。
私の考えるところでは、新書を読むことが、読書力の重要なラインだ。
私自身「新書時代」とでも呼びたいほど新書にはまった時期があった。十八、十九、二十歳あたりがそのピークだった。岩波新書で言えば、E・H・カー『歴史とは何か』、島崎敏樹『感情の世界』、霜山徳爾『人間の限界』、丸山真男『日本の思想』、朝永振一郎『物理学とは何だろうか』、ポルトマン『人間はどこまで動物か』、内田義彦『社会認識の歩み』など、新書世界にのめり込んだ。短い期間に百冊、二百冊と読んだが、どれも素晴らしい栄養のある食物に感じられた。
新書は、より大きな知識体系への入り口になっている。一冊を読めば、よりレベルの高いものを二冊、三冊と読みたくなる。そうした吸引力がある。「知識欲」というのは刺激されれば、誰にでも本当に生まれてくる。新書という読書文化のスタイルは、まさにこの知識欲をかき立て、促進する最良の糧だ。
新書五十冊をこなしたかどうかは、私の経験から言えば大きな違いとなっている。五十冊というのは、およそ月二冊で二年、月一冊で四年といった現実的な量だ。十冊程度ではまだ「技」として不安定だが、五十冊になると新書系の読書に確実に慣れてくる(斎藤孝『読書力』(岩波新書))。
それでは場合によっては不十分という見方もあるだろうが、1つの基準として参考にしておきたい。
日本近代史を学ぼうという人なら『歴史とは何か』や『日本の思想』は、一度に全部理解できなかったとしても、挑んでおいてほしい。
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